宇宙分野におけるサイバーセキュリティソリューション
宇宙産業は国家安全保障と新経済圏の要として衛星通信・地球観測等で急拡大し、サイバー攻撃や障害から国家的影響を防ぐセキュリティ対策が不可欠です。
はじめに
宇宙産業は今、国家安全保障の要であると同時に、民間ビジネスの新たなフロンティアとして急速に拡大しています。衛星通信、地球観測、宇宙輸送、宇宙資源開発など、多様な分野でスタートアップから大手企業までが参入し、宇宙空間は「新たな経済圏」として注目を集めています。
しかし、宇宙システムはその性質上、サイバー攻撃やシステム障害が国家的・国際的な影響を及ぼすリスクを孕んでおり、セキュリティ対策は単なる技術課題にとどまらず、社会的信頼を支える基盤として極めて重要です。
DNVは、160年以上にわたり培ってきたリスクマネジメントとアシュアランスの専門性を活かし、宇宙・防衛・サイバーセキュリティといった先端領域においても、信頼性の高い統合的なサービスを提供しています。
DNVの強み
グローバルな信頼性
ノルウェーに本拠を置くDNVは、世界100カ国以上で活動し、各国政府・企業から高い信頼を得ています。
マルチドメイン対応力
海洋、エネルギー、製造、IT、宇宙といった多様な分野における知見を融合し、複雑な課題に対して統合的な解決策を提供します。
中立性と透明性
第三者機関としての立場を活かし、利害関係に左右されない客観的な評価と助言を行います。
DNVのサービス
1. セキュアバイデザイン:設計段階からのセキュリティ確保
宇宙システムは、地上局、通信リンク、衛星本体といった複数のコンポーネントから構成され、それぞれがサイバー攻撃の対象となり得ます。特に、地上局のネットワーク侵入や、衛星のコマンド制御系への不正アクセスは、重大な被害を引き起こす可能性があります。
また、衛星は一度打ち上げられると、物理的なアクセスが極めて困難になります。そのため、運用中に発生するセキュリティリスクに対して「後から対応する」ことは現実的ではありません。ここで重要となるのが、「セキュアバイデザイン(Secure by Design)」の考え方です。
セキュアバイデザインとは、システムや製品の設計段階からセキュリティを組み込み、脅威を未然に防ぐアプローチであり、以下のような実践が求められます。
- 脅威分析とリスク評価:設計初期における潜在的な脅威を洗い出し、そのリスクを評価
- セキュリティ要件の明確化:機能要件と同等にセキュリティ要件を定義し、要求駆動による開発
- ソフトウェアのサプライチェーン管理:サードパーティやオープンソースソフトウェアを含め外部ライブラリやソフトウェア、ファームウェアの信頼性確保
- 脆弱性管理とパッチ適用(SWアップデート含む):運用中のリスクを最小限に抑える体制整備、改ざんやなりすましを防止するための仕組み
このような取り組みは、単にリスクを低減するだけでなく、製品やシステムの品質向上や市場競争力の強化にもつながります。
DNVの提供サービス例:
- セキュリティ・バイ・デザインに基づく設計レビューとアドバイザリ
- 脅威分析およびリスクアセスメントの実施支援
- セキュリティ要件定義とアーキテクチャ設計支援
- ソフトウェアサプライチェーンのセキュリティ評価
- 脆弱性管理体制の構築および技術支援
2. スタートアップを含んだ全プレイヤーによる業界標準類への対応
宇宙分野におけるセキュリティ標準は、国際的な枠組みと各国の政策の両面から整備が進んでいます。たとえば、NASA(米国航空宇宙局)、ESA(欧州宇宙機関)、JAXA(宇宙航空研究開発機構)などが宇宙分野向けの標準を提示しており、それらへの対応が求められます。安全保障の観点では、各国の要件を満たす必要があり、米国ではNIST(米国国立標準技術研究所)の文書が基準となることが多くあります。
これらの要件は大企業にとっても対応が難しいとされており、スタートアップにとっては、限られた人員や資金の中で高度なセキュリティ要件に対応することは大きな挑戦です。そのため、システム全体を俯瞰し、保護すべき領域を可視化したうえで、対応可能な要件を特定し、要件のテーラリングや段階的な適用を検討することが有効です。
また、スタートアップや小規模組織にとっては、日本原案で開発を進めているVSE(Very Small Entities)向け宇宙ソフトウェア開発の手引きである ISO/IEC 29110-7-1の活用も有効です。この規格は、限られた人員や資源の中でも、ソフトウェア開発における品質と信頼性を確保するための実践的な枠組みを提供しており、宇宙分野における初期段階の体制構築にも適しています。
DNVの提供サービス例:
- 各国・国際機関(NASA、ESA、JAXA、NIST、ISO等)の標準・ガイドラインへの適合支援
- セキュリティ要件のテーラリングと段階的導入の支援
- スタートアップ向けのセキュリティ成熟度評価とロードマップ策定
- ISO/IEC 29110-7-1に基づくプロセス導入支援と適合性評価
- セキュリティアーキテクチャ設計支援
3. 信頼の基盤を築く第三者評価
最終的に、外部の第三者による評価は、セキュリティ体制の信頼性を客観的に示す手段となります。これは、国内外のパートナーや顧客に対する信頼の証となり得ます。
また、第三者評価は単なる証明ではなく、以下のような価値を持ちます。
- セキュリティ成熟度の可視化:組織の強みと課題を明確化
- 継続的改善の促進:PDCAサイクルによるシステムセキュリティや体制の強化
- 市場での差別化:信頼性を武器にしたビジネス展開
特に、国際市場を視野に入れる企業にとって、第三者評価は「信頼の通貨」として機能します。
DNVの提供サービス例:
- 第三者評価および監査
- セキュリティ成熟度モデル(DoD CMMC、NIST CSF等)に基づくギャップ分析
- 継続的改善を支援するPDCAサイクルの導入支援
おわりに
安全保障を含む宇宙分野において、信頼性と透明性を兼ね備えたアシュアランスパートナーの存在は、国家・企業の持続的な成長と安全の鍵を握ります。DNVは、宇宙・防衛・サイバーセキュリティの交差点に立ち、グローバルな視点とローカルな実行力をもって、皆様のミッションを支援いたします。ご関心をお持ちの方は、ぜひお気軽にご相談ください。