ISO 9001とISO 14001:違いと共通点
国際標準化機構(ISO)によると、マネジメントシステム認証はガバナンスおよびリーダーシップ機能をサポートするものです。また、持続可能なビジネスパフォーマンスの実現を支援するため、これらの規格は業種や地域を問わず、あらゆる種類・規模の組織に適用可能であり、健全なガバナンスのための包括的なベストプラクティスと見なされています。
ISOの規格には、要求事項を明記しており認証可能なものと、優良な実践を支援するためのガイドライン規格があります。認証可能ないずれかの規格を採用している事業者は、DNVのような第三者認証機関による審査を受けることができます。これらの規格に適合することで、事業者は認証書を取得でき、それによりコンプライアンスとコミットメントを示すことが可能になります。
DNVの認証取得方法については、こちらをご覧ください。
世界中で最も多くの組織に採用されている2つの規格が、ISO 9001(品質マネジメントシステム)とISO 14001(環境マネジメントシステム)です。
ISO 9001とは?
ISO 9001は、品質マネジメントシステム(QMS)に関する国際規格です。ISO 9001認証を取得するためには、規格に定められた要求事項に従ってプロセスや手順を実施する必要があります。
ISO 9001は、顧客重視、リーダーシップ、従業員の参画、プロセスアプローチ、継続的改善など、7つの品質マネジメント原則に基づいています。
この規格は、ISOによって策定された最初のマネジメントシステム規格の1つであり、1987年に初版が発行されて以来、あらゆる業界およびサービス分野で最も広く使用されているマネジメントシステム規格となっています。品質とパフォーマンスに関するトレーニングの詳細をこちらをご覧ください。
ISO 14001とは?
ISO 14001は、効果的な環境マネジメントシステム(EMS)のための要求事項を定めた国際規格です。環境への影響を管理・改善するためのプロセスや手順に関する要求事項を提供しています。
1970年代から1980年代にかけて、人間が環境に与える影響に対する関心が高まりました。1992年には、持続可能な開発と環境規制強化のきっかけとなった「リオ地球サミット」がブラジルで開催され、現代のESG重視の先駆けとなりました。ISO 14001はその後1996年に初版が発行されました。
この規格を採用することで、環境への影響を最小限に抑え、法的およびその他の遵守義務を満たし、環境目標を達成するための積極的な対策を講じることができます。資源利用から、廃棄物管理、環境パフォーマンスのモニタリング、利害関係者の環境コミットメントへの参画など、さまざまな要素を網羅した枠組みです。
環境マネジメント認証の詳細はこちらをご覧ください。
ISO 9001とISO 14001の違い
これらの規格は、単に法令要求事項を満たすことだけを目的としているわけではありません。それも重要な要素の1つではありますが、どちらの規格も、品質または環境面から組織全体のパフォーマンスを向上させることを目的としています。
主な違いは、それぞれが焦点を当てる領域にあります。ISO 9001は品質マネジメントに重点を置いており、ISO 14001は環境マネジメントを対象としています。
両規格はISOの「統一構造(Harmonized Structure)」に基づいており、同様の構成と論理で設計されているため、2つのマネジメントシステムを統合しやすくなっています。しかし、目的とスコープが異なるため、具体的な要求事項や対象とする内容には大きな違いがあります。
ISO 9001は、製品やサービスが顧客および法令要求事項を一貫して満たすことと、顧客満足の向上を目指しています。一方でISO 14001は、組織の環境責任と持続可能性を体系的に管理することを目的としています。
ISO 9001とISO 14001の共通点と共通要件
ISO 9001とISO 14001はそれぞれ異なる焦点を持ちながらも、共通の構造(統一構造)に基づいており、共通の要求事項が数多く存在します。このため、この二つのマネジメントシステムの統合が容易で、異なるマネジメント領域を統合的に管理することが可能です。
どちらの規格も、マネジメントシステムを策定・実施・維持し、継続的に改善することを求めています。また、顧客や法規制要求事項を理解・満たすこと、トップマネジメントのリーダーシップと関与、構造化されたプロセスアプローチの重要性を強調しています。
以下の共通原則は、ISO 9001とISO 14001の類似点を示しています。
- 文書化された情報
両規格では、プロセスの運用と知識保持のために文書化された情報の作成、更新、管理、保存が求められます。マネジメントシステムの継続的評価と改善を保証するため、内部監査やマネジメントレビューも共通の要求事項です。 - 運用の計画と管理
両規格共通の要求事項として、規格要求事項を満たすため、またリスク評価に基づいた対応策を実行するためのプロセスの計画・実施・管理が必要です。 - モニタリング、測定、分析および評価
マネジメントシステムのパフォーマンスと有効性の確認のため、両規格ともこの活動が不可欠です。何をモニタリング・測定するか、その方法、タイミング、そしてモニタリング・測定結果の分析・評価の時期などを明確にする必要があります。
まとめると、ISO 9001とISO 14001にはそれぞれ固有の焦点がありますが、共通の構造(Harmonized Structure)や、文書化された情報、内部監査、マネジメントレビュー、運用の計画および管理、モニタリングおよび測定といった共通要求事項により、一般的に思われている以上に多くの共通点があります。
これにより、両規格を自社のマネジメントシステムに容易に導入・統合することが可能です。また、第三者認証を取得する際には、認証機関が両規格を対象とした統合監査を実施することを可能にしているのです。