ISO 9001 改訂 – 品質マネジメントシステム

国際標準化機構(ISO)は、2026年秋(おそらく10月~11月)に新しいISO 9001を発行する予定です。これにより、現行のISO 9001:2015が置き換えられます。ISO 9001は産業界全体で品質保証の基盤となる規格であり、この改訂は多くのステークホルダーにとって重要なものです。

2025年8月末にDIS(Draft International Standard:国際規格原案)段階に入り、文書が公開され、各国のメンバー団体による投票およびコメント提出が可能となっています。提出されたコメントへの対応は、2026年前半に行われる予定です。

改訂版 ISO 9001(DIS)– どのような変更が予想されるか

全体的な変更の範囲は中程度であり、2015年版への改訂時ほど大きな変更ではないと見られます。
DISで示されている主な変更点は以下のとおりです。

  • 品質文化と倫理的行動の促進
    新たに第5.1章「リーダーシップおよびコミットメント」に「品質文化と倫理的行動の促進」が追加され、その推進をどのように示すかに関する新しいガイダンスが示されています。また、この「品質文化と倫理的行動」は他の2つの箇条にも参照として追加されています。

  • リスクおよび機会の決定の明確な区分
    第6.1章では、リスクと機会の決定をより明確に区分するため、新しい小項目(6.1.1~6.1.3)が追加され、ガイダンスも拡充されています。

  • 第10.1章「継続的改善」の統合と拡張
    新しい第10.1章「継続的改善」は、2015年版の第10.1および第10.3を統合したものです。さらに、「関連ガイダンス」では、振興技術、デジタル化、信頼できるデータの活用が、業務(情報、機械、プロセス)の変革と改善に不可欠であることにも言及されています。

  • 2024年の気候変動関連の改訂内容の統合
    第4.1章および第4.2章に追加された「気候変動」関連の改訂内容が今回の原案に統合されています。

  • 第4章から第10章の要求事項の一部修正
    各章の一部要求事項に修正が加えられたほか、既存の要求事項をより明確に説明するための注記が新たに追加または改訂されています。

さらに、附属書Aは全体的に大幅に拡充され、第4章から第10章に対応するより詳細で分かりやすいガイダンスが追加されています。

なお、今回のDIS(国際規格原案)に対して提出されるステークホルダーからの意見やコメントを踏まえ、最終発行前に内容が変更される可能性があります。

移行ルールと期間

国際認定フォーラム(IAF)は、新しい規格への認証移行に関する必須文書(移行ガイダンス)を策定する予定です。これらの文書は、ISO 9001:2026の正式発行前のタイミングで公開される見込みです。
移行期間は通常、2年から3年程度とされています。

新規格への移行準備

可能な限り早い段階で移行準備を開始し、必要な変更点を適切に計画・管理システムへ反映できるようにすることをお勧めします。

移行に向けた推奨ステップ:

  • 改訂内容の早期把握
    改訂規格の変更点をできるだけ早く確認し、今回の移行期間が通常の3年間より短くなる可能性があることを念頭に置いて準備を進めましょう。
  • 関係者の教育と理解促進
    組織内の関連部門・担当者が、改訂内容およびその意図を十分に理解できるよう、必要な教育や情報共有を行いましょう。
  • ギャップの特定と実施計画の策定
    現行のマネジメントシステムと新要求事項の間にある差異(ギャップ)を特定し、必要な対応策を明確にしたうえで実施計画を立てましょう。
  • 改善措置の実施とシステム更新
    特定した対応策を実行し、マネジメントシステムを新しい要求事項に適合させるよう更新しましょう。

サポート内容

新しいISO 9001への移行準備を開始された際には、DNVが皆さまの移行プロセスをサポートいたします。

具体的には、以下の支援が可能です:

  • トレーニング:改訂内容や変更点の詳細を学び、重要な領域への対応方法を習得することで、継続的改善と効果的なマネジメントシステム構築を支援します。
  • 移行監査:新規格に沿った認証移行をサポートする監査。

DNVは、各ステップにおいて総合的にサポートいたします。