Power and renewables

風力発電所の平均寿命の延長:経年数は数字にすぎない

風力発電所の寿命延長

Longer life expectancy of wind farms

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Keir Harman

Keir Harman

Director, Renewables Operations

風力発電業界において、従来の「寿命の終わり(EOL)」の考え方が変わってきています。今では、風車の運転寿命は、予め認証で定められた年数でなく、経済性と故障の工学的リスクとのバランスに基づいて最適化されるようになっています。しかし風力発電所の場合、運転を30年、40年、50年と延長することが可能でしょうか?Keir HarmanがWind Energy Network Magazine最新号で専門家としての知見を語ります。

発電所設備の寿命は、電力市場のニーズ、選択した運用戦略、進化する技術に応じて時間の経過と共に移動する可動点と考えることができます。活用されていない価値は、革新的な動的制御とデータ解析に依って、より賢明な事業運用への転換を促進するでしょう。

メリット

近年、発電所寿命の評価方法の変化に伴い、事業者の正味資産価値が5%以上増加したという事例が報告されています。金銭的な利益に加え、事業者は、解体・撤去や新設の代わりに寿命延長という手段を取ることで、同じ資源から当初の想定を50%上回る電力量を発電できます。従い、カーボン・オフセットの取組として、ESG(環境・社会・ガバナンス)の面で実績を上げることができます。 

設備投資額は大きく、運用コストは比較的少なく、「燃料」がただである再生可能エネルギー発電設備の寿命延長という考え方は、目新しいことではありません。今日、一部の水力発電所は、戦略的に管理された既存設備の改修・修繕計画の下に、1世紀に亘り運転を続けています。それでは、風力発電所の場合、運転を30年、40年、50年と延長することが可能でしょうか? 答えは、多分「是」となるでしょう。但し、それは、運用リスクの管理と、既存設備の修繕計画の内容次第です。

投資家の信任

風力発電所事業者は既に風力発電設備の長期運用を想定し、それに応じた財務モデルの変更を始めており、30年以上の寿命設定は成熟した風力発電市場においては当たり前のことになっています。投資家の信任は通常、型式認証取得済みの風車の選定プロセスにおいて疲労荷重の余剰設計マージンを評価することにより担保されます。余剰設計マージンは、運転中の風車の正確な荷重測定値と洗練された荷重計算を組み合わせることにより、期待寿命を大幅に延長することができます。

設備寿命の延長は、統合的な方法であり、「発電設備の疲労荷重に対する耐久性はどの程度残っているのか?」、「それを如何に最適活用できるか?」とうい二つの根本的な質問に対処することで検討されます。広範な寿命戦略を評価するコストモデルは、データ解析に依存した枠組に基づいています。


「それでは、風力発電所の場合、運転を30年、40年、50年と延長することが可能でしょうか? 答えは、多分「是」となるでしょう。但し、それは、運用リスクの管理と、既存設備の修繕計画の内容次第です。」


選択肢

風車制御プログラムの変更、発電所全体の制御方針、O&M方針、既存設備の補修計画は、入力時に選択できる全てのオプション項目です。シミュレーションモデリングと先進的データ解析は、狙いとしたコンポーネントの検査によって補完されます。

この方法の中核をなすのが運用リスクの管理です。例えば、各風車が全て同一の設計である風力発電所において、一部の風車が他の風車よりも高い疲労荷重に晒されることがあります。最新の洗練された制御プログラムにシステムを更新することにより、罹る荷重を風力発電所全体に均等に配分できます。ヨー制御により風車の向きを能動的に回転させ、風下の風車が受けるウェイクを軽減し、荷重を制限するウェイク・ステアリングという手法は、現在開発・実験段階にあります。

より洗練されたアプローチ

今日、風車保守の戦略は、より洗練されてきています。オペレータは、相対的に荷重負荷の大きいコンポーネントを風車間で交換し、荷重を均等化することができます。寿命中期にある風車のうち、荷重負荷が最も大きい風車のブレードと最も小さい風車のブレードを交換することで、疲労寿命のバランスを取ることができます。また、経年により増加するコンポーネント疲労リスクについては、情報に基づきリスクを起点に効果的・効率的に目的・目標達成を図る検査・保守プログラムを実施することにより、リスクを低減します。

再生可能エネルギーの普及拡大と電力価格低下へと向かうエネルギー変革において、今後風力発電所は、系統連系上での受動的な、予め定められた方法では運転されなくなるでしょう。代わりに、動的制御を用いてシステム全体の均衡と統合性を維持し、部分負荷運転を頻繁に行うことで、電力市場のニーズに柔軟に対応することが求められます。このような運用戦略の変化に伴い、疲労寿命予測を継続的に見直す必要性が生じるでしょう。

新たな時代

こうした新たな時代には、運用上の変化がもたらす想定寿命への影響をモデリングし、予測する風力発電所デジタルツインが登場するでしょう。風力発電業界は、当初認証で想定していた寿命をはるかに超える寿命実現に対する投資家の信任を得るために、従来の考え方や慣行に挑戦し、リスク管理アプローチを採用し、革新を推進しなければなりません。

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