エネルギー変革の展望: 世界のエネルギーミックスのシェアで再生可能エネルギーは化石燃料を逆転するに至っていない
2022年、世界の電気自動車販売台数と太陽光発電および蓄電池の導入量は過去最高を記録しました。しかし、再生可能エネルギーは、増加するエネルギー需要を僅かに満たしたものの、エネルギーミックスのシェアで化石燃料を逆転するには至っていません。化石燃料は、依然として、絶対的に増加しています。
エネルギー起源CO2 排出量は依然として過去最高を記録し、2024年にようやくピークに達する見込みですが、その時が世界のエネルギー変革の事実上のスタートになると言えるでしょう。
エネルギーミックスにおける再生可能エネルギーと化石燃料の比率を52/48と設定したとき、エネルギー変革を決定づける要因は、脱炭素化と電化です。
DNV はこの度、『エネルギー変革の展望』第7版を刊行いたしました。
地球温暖化を1.5°C の上昇に抑制できる可能性は今まで以上に低くなっています。パリ協定の目標を達成するためには、CO2排出量を2030年までに半減させる必要がありますか、DNVの予測では、この大幅な削減は2050年になっても起こらないでしょう。CO2排出量は、今日と比較して、2030年には僅か4%減、今世紀半ばには46%減と予想されます。 エネルギー起源CO2排出量は依然として過去最高を記録し、2024年にようやくピークに達する見込みですが、その時が世界のエネルギー変革の事実上のスタートになると言えるでしょう。
「“変革”という言葉をクリーンエネルギーが絶対的に化石エネルギーに置き換わるという意味で用いるとすれば、世界全体として、エネルギー変革はまだスタートしていません。」と、DNV グループ代表兼CEOレミ・エリクセンは述べています。「明らかに、エネルギー変革は、セクター、国、コミュニティといったレベルでは始まっていますが、世界全体としては、化石エネルギーからの記録的な排出は続き、来年はさらに増加するでしょう。」
エネルギー安全保障は、地政学的な情勢の変化により、エネルギー政策の推進要因として強化されています。各国政府は、現地調達エネルギーに対するプレミアムの提供に積極的で、この点は、『展望』の結果に顕著な影響を与えています。例えば、インド亜大陸の場合、エネルギーミックスに占める石炭の比率が増大し、変革のペースは鈍化するものと予想されます。欧州では、気候、産業、エネルギー安全保障の各目標が連動し、変革は加速しています。
「変革」という走者はまだ、スターティング・ブロックが外れていませんが、一旦、スタートを切れば、再生可能エネルギーは化石燃料よりも速く疾走するでしょう。今後、追加されるエネルギー供給量の大半は風力と太陽光であり、各々、2022年~2050 年までに、9倍、13倍と増加するでしょう。発電量は、今日から2050年までに、2倍以上となり、エネルギーシステムに効率性をもたらすでしょう。エネルギーミックスにおける化石燃料と非化石燃料の比率は現在の80/20から、今世紀半ばには48/52へと拮抗するでしょう。
太陽光発電の設備容量は、2022年に過去最高の250 GWに達しました。風力は、インフレやサプライチェーンの逆風を受けながらも、2030年までに、世界の系統連系電力の7% を供給、設備容量は倍増を遂げるでしょう。しかしながら、短期的には、北米や欧州を含む多くの地域において、再生可能電力の拡大、系統連系利用の蓄電池やEV充電ポイントといった分散型エネルギー設備の普及における重要なボトルネックとして、長距離・地域内送電グリッドの制約という問題が出現しています。
「金利上昇、サプライチェーンの課題、ウクライナでの戦争に伴うエネルギー貿易の動向による短期的な停滞はありますが、エネルギー変革の長期的な動向は明白です。世界のエネルギーシステムは、1世代の期間に、エネルギーミックスの構成比として化石由来80%から非化石由来約50%へと前進するのです。これは速いペースですが、パリ協定の目標を達成するには十分な速さとは言えません。 COP 28の開催に先立ち、DNVはレポート『Pathway to Net Zero』を刊行し、主要な課題は技術にあるのではなく、むしろ、再生可能エネルギーと蓄電の迅速な導入を推進するインセンティブと化石燃料からの排出行動を抑制するディスインセンティブの両方が欠如しています」と エリクセンは述べています。